最近耳にするようになってきた気密性。
そもそも気密性能とはなんなのか?
どうして気密性能はこれから建てる住宅に必要なのか?
良くわからない方も多いのではないでしょうか。
今回はその気密測定について書いていきたいと思います。
まず、気密測定とは
家の隙間の小ささを表す性能のことです。
日本では、この気密性能をC値という数値で表わします。
このC値ですが、〇cm2/m2と表わし、家の床面積に対して、どのくらいの隙間があるのかを知ることができます。
ちなみに、平成11年の次世代省エネ基準を見てみると、
Ⅰ・Ⅱ地域2.0cm2/m2
Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ・Ⅵ地域5.0cm2/m2
となっています。
これは、JISでも定められた測定方法があり、その測定によって隙間の大きさを出すことが出来ます。
ハウスメーカーがホームページなどで紹介する数値は、実験棟での数値だったりしますが、気密を高めようとしっかりと管理された中で建てる家と実際のお客様の家とでは数値が変わることは容易に想像がつくでしょう。
『家を気密すると良くない!』
他社工務店さんなどの書き込みなどでみたりしますが、果たしてそうでしょうか?
理由を詳しく読んでみると
「木は呼吸をしていて、家の隙間を無くしてしまうと、ちゃんと息が出来なくなるから、寿命が縮む」
といったことでした。
確かに、天然の木は湿気を吸ったり吐いたりしています。
その吸湿や放湿を妨げると、腐ったりシロアリの被害を受けやすくなり、木の寿命(家の寿命)は短くなってしまいます。
ただ、家の気密は湿気のやり取りを止めるのではなく、屋外と室内の空気のやり取りを止めることなのです。
そこを勘違いしてしまうと、書かれていたとおり、寿命が短い家になってしまいます。
家の隙間が小さいということは、家の中の空気が外に逃げていきにくいということです。
冬の家の中の空気は、加湿器を運転したり調理したり入浴することで、外の空気より多くの湿気を含んでいます。
その水蒸気が隙間から家の壁の中に入ってしまうと、そこで結露する危険性が出てしまいます。
これは、壁内結露と呼ばれる現象です。
この壁内結露(内部結露)は柱や土台を濡らしてしまい、結果、腐れやカビ、シロアリの発生に繋がります。
腐れやカビ、シロアリが発生すると、家の寿命は極端に短くなってしまいます。
では、気密された住宅ではどうでしょう。
一般的に家の気密性を上げるためには、壁の室内側に水蒸気を通さない専用のシートを張ります。
このシートは気密シートと呼ばれ、家の中の水蒸気が壁の中に入るのを防いでくれます。
また、壁の中の湿気は、家の外側に逃げていくため、湿気の出入りを阻害するようなことはありません。
逆に気密シートを張らず、室内の空気を壁の中に入れるような建て方だと、壁の中で結露が起こり柱などを濡らす原因になってしまいます。
たとえ壁に調湿効果のある素材を使ったとしても壁内結露を防ぐことはできません。
つまり、壁内結露を防ぐためには、家の中の多く湿気を含んだ空気を壁の中に入れないことが重要なのです。
このように、
「シートを張って気密を高めることが家の寿命を短くしないための方法」
というのは分かってもらえるのではないでしょうか。
近年では、住宅に断熱材を入れることが当たり前となってきています。
断熱性を上げることによって、外に逃げていく熱を防ぐことができますので、断熱性が低い家と比べると、同じ暖房費を使って家の中を暖めても室温が高くなります。
しかし、いかに断熱性だけが優れていても家に隙間風が入る状態では、なかなか暖かいと感じられなくなってしまいます。
また、隙間風はとても冷たいので、床付近を這うように流れます。
そのため、断熱性が優れただけの家では、床付近と顔付近の温度差が大きくなってしまうのです。
ちなみに、気密性能を上げることで床付近の温度は断熱性能を1ランク上げるくらいの効果があります。
そして、家の気密性を上げる大きなメリットとして
『その家に住むご家族が安全に過ごせる』
ことが挙げられます。
安全な家にするためには、換気がとても重要になってくるのですが、
「換気」 と 「気密性を上げる」
なんだか相反することのように感じてしまう方も多いでしょう。
理解できなかった理由として、私の住んでいた実家には、常にまわしておかないといけない換気扇がなかったため、換気は、隙間から自然と行われるものだという認識があったからです。
そのため、
隙間風がないと換気ができないのではないか?という結論に至っていたのです。
しかし、現在新築される住宅は、シックハウス症候群にならないために、常に作動させておかなければならない換気システムの設置が義務付けられています。
「2時間に1度家の中の空気がすべて入れ替えられる能力が必要」
とされています。
(厳密にいうと、使う建材の種類によって必要な換気の量は変わってきます)
この2時間に1度という数字の根拠は、
「ホルムアルデヒドの家の中の濃度が多くの方がシックハウスを発症する危険が小さい濃度に抑えるために必要な換気の量」
が定められていますので、生活するご家族様にとって安全な家にするためには、とても重要なのです。
ただ、現在定められる法律では、その能力を持った換気システムの設置の義務付けだけで、本当に計画通りに換気されているか確認するところまでは定められていません。
隙間の大きい家で、家の空気を外に出すところだけ換気ファンが付いているような家の場合(第3種換気)、各部屋に取り付けられた空気を取り入れる換気口からはほとんど空気が入って来ていません。
その理由は簡単です。
窓を開けてトイレについた換気扇をまわしても家の中の空気が入れ替わらないのと同じように、隙間が大きいと、換気扇がまわっているその周辺しか綺麗な空気が入ってこないのです。
つまり、気密性が低いと、家全体の空気の入れ替えができないために、ホルムアルデヒドなどの体に悪い化学物質が適切に排除できなくなってしまうのです。
気密性が高い = 換気が計画通りに行える
つまり 安全ということが分かって頂けたでしょうか。